先月[電動車椅子にまつわるFAQ 児童です。 はじめの電動車いす。どうやって練習すればよいですか?]
というタイトルのブログを書きました。
公費支給制度では、電動車椅子は「安全に走行できること」が支給要件になっていますが、練習機会が中々なく認めてもらうことが難しい問題。
電動車椅子ではなく、電動移動機器という選択肢と、いくつか代表的な機器を紹介させて頂きました。
その投稿に対し、長年電動車椅子を利用されているコボリンユーザーの杉浦さんがコメントをくれましたので、紹介致します。とても大事なことが書かれていました。
「移動とは、単なる場所の変更ではなく、意思の表現であり自由の形」
私たちが車いすを作る理由も、まさにここにあります。車いすは単なる移動手段ではなく、「自分の意思で世界に関わる道具」だと思っています。
以下は頂いたコメントです。特にお父さん、お母さんには参考になる意見だと思いましたので、紹介します。
□ □ □ 以下引用 □ □ □
身体の障害が重度であるために自力で車いすを漕いだり、電動車いすを操作することが難しい児童、さらに、そこに知的な障害が伴う児童の場合には…
“連れていってもらう”
という受け身の状態から、いかに
自分で動く(移動する)
↓
自分は動けるんだ
↓
好きなように動いていいんだ
という所まで本人の意識を持っていくかが最大の課題になると思います。
身体の自由が効く子であれば、成長発達につれて勝手に走り回り、勝手に転び、『動作の主体性』は自然に獲得されていきます。
しかし身体に制限のある子は『誰かに連れていってもらう』まで、移動の自由がありません。
そしていつの間にか『移動』が自分の権利であることや、移動の欲求そのものを感じる機会を逸してしまいます。
『移動する』という事を本人の手元に取り戻すことは、成人の障害者の場合以上に、児童に必要なことでありましょう。
なぜなら、子どもの時期というのは、単に身体が育つ時期ではなく、
『自分が世界に働きかけてよい存在なのだ』という感覚を身につける時期でもあるからです。
自分が手を伸ばせば物に触れられる。声を出せば誰かが振り向く。動けば景色が変わる。
そうした因果関係を、子どもは遊びや失敗の中から学んでいきます。
ところが、自分では動けず、常に他者の判断によって運ばれるばかりであると、『自分が何かをしても世界は変わらない』という無力感が先に染みついてしまうことがあります。(私にも実感があります)これは単なる移動能力の問題ではなく、自己決定や意欲、さらには人格形成にまで関わる重大な問題です。
だからこそ私たちは、重度障害や知的障害のある児童に対して、単に安全に介助するだけで満足してはならないのだと思います。
必要なのは、本人が少しでも『自分の意思で動かした』『自分で選んだ』『自分の行きたい方へ向かった』という実感を積み重ねられる環境づくりです。たとえ最初はごく僅かな操作であってもよいのです。スイッチを押したら前に進む。視線を向けた方向へ動く。手や足や顎など、残された動きを用いて機器を操作する。あるいは、支援者が全面介助する場合であっても、『どっちへ行く?』『止まる? 進む?』と問いかけ、本人の反応を待つ。その一つ一つが、『移動は与えられるものではなく、自分のものなのだ』という感覚を育てていきます。
ここで大事なのは、周囲の大人が効率や安全ばかりを優先しすぎないことです。もちろん事故を防ぐ配慮は欠かせません。けれども、大人の都合で『危ないからやめよう』『時間がかかるから抱えて行こう』『どうせ分からないだろうからこちらで決めよう』を繰り返してしまえば、子どもはますます受け身になっていきます。そうして育った受け身は、やがて生活全体に広がります。移動だけではなく、食事、遊び、学習、対人関係、将来の進路に至るまで、『誰かが決めるもの』になってしまいかねません。
反対に、たとえ小さくとも『自分で動けた』という経験は、その子の世界を確実に広げます。
自分で近づけたから、見たいものを見に行ける。
↓
自分で離れられたから、嫌なものから距離を取れる。
↓
自分で向きを変えられたから、好きな人のところへ行ける。
この『近づく』『離れる』『選ぶ』という基本的な自由は、人間の尊厳そのものに関わるものです。移動とは、単なる場所の変更ではなく、意思の表現であり、生活の主導権であり、自由の具体的な形なのです。
したがって、重度の身体障害と知的障害を併せ持つ児童への支援においては、
『どれだけ上手に連れていけるか』ではなく、『どうすればその子が自分の移動に参加できるか』『どうすれば自分の意思で動いたという手応えを持てるか』という視点が、もっと重視されるべきでしょう。
□ □ □ 引用ここまで □ □ □
今回、投稿してくれた杉浦貢さんは当社のホームページ 「ユーザー物語」にて特集しています。
「地域の子供たちと向き合うことで、社会参加。」電動車いすの話から、地域での自立生活の話まで紹介しています。
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