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2020.10.09

手動車椅子・簡易型電動車椅子・電動車椅子の違いについて

タグ:姿勢変換,車いす,電動車いす

手動車椅子・簡易型電動車椅子・電動車椅子の違いについて

こんにちは! 『車いす工房 輪』サポートライターのこばやしです。
今回は、手動車椅子・簡易型電動車椅子・電動車椅子のそれぞれの違いと、実体験も含めたメリットとデメリットについてお話します。

手動車椅子とは

 
電気の力を使わずに、人の力で動かすのが手動車椅子です。
手動車椅子の種類はさまざまですが、腕などを使って自力で動かすもの(自走用)と、介助する人が押すことで動かすもの(介助用)があります。
 
 

簡易型電動車椅子とは

 

手動車椅子を電気の力で動かすようにしたものが、簡易型電動車椅子です。手動車椅子の後輪をモーターが付いたものに付け替えて、バッテリーを搭載することで、ジョイスティックでの運転が可能になります。
手動車椅子のフレームをそのまま使うので、外見は手動車椅子のようにも見えます。
 
 

電動車椅子とは

電気の力で動かすのが電動車椅子ですが、簡易型電動車椅子とくらべてバッテリーが大きくパワーがあるので、多少の段差なら乗り越えられたり、小石にタイヤを取られることなく走行できたりと、外での移動が安定しています。
電動車椅子が簡易型電動車椅子とくらべて大きく違う点は、移動の面だけではなく「自分で姿勢が変えられること」にあります。
 
電動車椅子は、ジョイスティックで操作するように、弱い力でも自分で電動リクライニングやティルト(※1)ができます。
 
※1/座位の姿勢を保持したまま座面と背もたれの角度を同時に変えること
 

それぞれのメリットとデメリット

手動車椅子

メリット

バッテリーを積んでいない分、3種類の車椅子のなかでは手動車椅子が一番軽量です。
車椅子自体が軽量なので、たとえば階段でしか行けない場所でも、大人が数人いれば持ち上げて移動することもできるでしょう。
また、折りたたみが可能で車のトランクに詰めるため、利用者本人が車に移乗できる状態であれば、自走用、介助用ともに一般のタクシーを利用できたり、自家用車に積んで移動することも可能です。
ある程度腕力があって、自走できる方にとってはかなりフットワークのよい移動ツールが手動車椅子です。

デメリット

自走できる場合でも、長時間車椅子を漕ぎつづけるのは体力を消耗します。
フットワークのよい移動ツールであるはずが、体力との兼ね合いで移動を断念してしまう場面もあるかもしれません。
また、自走できない方が手動車椅子を使う場合は、少しの移動も自分以外の人に委ねることになるので、不安やストレスを抱えてしまうこともあります。

簡易型電動車椅子

メリット

自走できる方が簡易型電動車椅子を使う場合、自走する部分と電動で移動する部分を使い分けることで、体力の消耗を減らすことができます。
また、屋内での使用がメインであれば、小回りがきく簡易型電動車椅子は見た目もスマートで使いやすいでしょう。

デメリット

手動車椅子のよいところを残しているのが簡易型電動車椅子ですが、外の道を走るには少し頼りないです。電動車椅子にくらべて軽量なこともあり、悪条件な外の道を走るのは危険です。
また、軽量とはいえ手動車椅子よりは重いので、ふだん手動車椅子を自分の車に積んで運転する方でも、腕力だけで車内に積みこむのは難しいでしょう。
 

電動車椅子

メリット

体のどこかが動かせれば、弱い力でも自分で動かすことができるのが電動車椅子です。パワーがあり、外の道での移動が安定しています。重量もあるので、よっぽどの悪条件でなければ走行の危険は少ないでしょう。
前述したように、走行以外のメリットに「自分で姿勢が変えられる」点があります。
自分で姿勢を変えられないと、体のどこかしらに重心が集中して痛みやしびれがでますが、電動で姿勢を変えて体圧を分散させることで、体を楽にすることができます。個々の障害に応じて細かくカスタマイズできるのが電動車椅子です。

デメリット

重量があるので、簡易型電動車椅子のように人の力で押すのは難しいです。(手動に切り替えて押すことはできますが、長距離の移動は現実的ではありません)
また、手動車椅子や簡易型電動車椅子のように折りたたんで車に積むことが難しいため、車での移動は電動車椅子のまま乗れるリフトカーなどに限定されます。

 

手動車椅子から電動車椅子に変えてみて感じたこと

私が電動車椅子を使いはじめた高校生のときに、それまで乗っていた手動車椅子との違いを大きく感じた点は、友だちと「横並び」で歩きながら会話できたことです。

顔を見て歩きながら話せたことや、電動車椅子を使って自分で動いたときのフワフワとした不思議な感覚は、その後に広がっていく「可能性の予感」だったように思います。その10年後にはイタリアまで行っていました。
現在は進行する体の障害に合わせ、電動リクライニング・ティルト機能搭載の電動車椅子を使って快適に過ごしています。

 

 

生活スタイルによってもメリット・デメリットは変わる

介助用の手動車椅子を使っていても、介助者と一緒に全国各地を飛びまわる方もいれば、簡易型電動車椅子の手動・電動部分を上手に切り替えて、行動の範囲を広げている方もいます。
何がメリット・デメリットなのかは一概には言えませんが、自分の体の状態のほかに、どんな生活を送っていきたいかも考えてみると、可能性が広がる車椅子選びにつながるかもしれません。

 

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文/こばやし
電動車いすユーザーで、SMA(脊髄性筋萎縮症)2型による四肢体幹機能障害
介助を受けながら在宅ワークをしている