こんにちは! 『車いす工房 輪』サポートライターのこばやしです。
電動車いすには、おもに3つの駆動方法があるのを知っていますか? 今回は、それぞれの駆動方法や特徴などをご紹介します。
駆動方法の種類
駆動方法の違いは、電動車いすのタイヤのどの部分に走行用モーターが付いているかによるものです。
後輪駆動/4輪
走行用モーターが、後輪の左右のタイヤに付いているタイプです。前輪が独立して動くことはなく、後輪の動きに追従します。後輪駆動は直感的に動かせるので、操作が比較的簡単です。ただ、回転軸が後ろにある分、直角に曲がりたいときなどは大まわりして切り返す必要があるので、狭い廊下から部屋へ入るときなど、それなりのスペースを必要とします。
前輪駆動/4輪
走行用モーターが、前輪の左右のタイヤに付いているタイプです。後輪は前輪の動きに追従します。前輪駆動は段差の乗り越えに強く、振動も比較的少なめです。回転軸が前にあるので、直角に曲がる動きが後輪駆動よりも得意ですが、後方にスペースを必要とするのにはかわりありません。また、後輪は見えづらいので、ぶつからないか気になるかもしれません。(試乗した際の個人的な感覚です)
中輪駆動/6輪
走行用モーターが中央の左右のタイヤに付いているタイプです。中輪駆動は、全部で6つのタイヤがあります。ほかの2つのタイプに比べて常時設置するタイヤが多い分、振動を拾いやすかったり、駆動輪である中輪が浮いて空転してしまうことがあるため、急なスロープに弱かったりすることがありますが、回転軸が中央にあるので、狭いスペースでも回転がしやすく、小回りが利くでしょう。
駆動方法による回転半径の違い
後輪駆動・前輪駆動にくらべ、中輪駆動は圧倒的に回転半径(※1)が小さいです。
車いす工房 輪で取り扱っている代表的な機種のいくつかで計算してみると、前輪駆動の回転半径は約673mm、後輪駆動の回転半径は平均で約866mmなのに対し、中輪駆動は約558mmという結果に。
住環境や周辺環境から考える
回転半径が小さいのが中輪駆動の強み。例えば、廊下から居室に入るときや、エレベーター内での方向転換、バスの中での幅寄せなどは中輪駆動が便利でしょう。
これは私が電動車いすユーザーの友人宅へ遊びに行ったときのことですが、そこは対面式のキッチンで、キッチン内のスペースに入るとき、背中側は壁になるので直角に曲がらないといけませんでした。電動車いすの全長は友人のものとあまり変わらないのですが、後輪駆動の私の電動車いすでは入ることができず、中輪駆動の電動車いすを使っている友人は入ることができていました。
後輪駆動・前輪駆動は中輪駆動と違って振動を拾いにくく、走行に安定性があるので、周辺環境の道の状態によっては適しているかもしれません。
ただ、中輪駆動も機種により振動を拾いにくい工夫がされているので、一概には言えないでしょう。
新しく電動車いすをつくるときには、まず室内で自由に動けるかを確認しておくことが大切です。後輪駆動・前輪駆動、中輪駆動もそれぞれメリットとデメリットがあるので、自宅と屋外の両方で試乗してみることをおすすめします。
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文/こばやし
電動車いすユーザーで、SMA(脊髄性筋萎縮症)2型による四肢体幹機能障害。介助を受けながら在宅ワークをしている。