こんにちは! 『車いす工房 輪』サポートライターのこばやしです。
先日、三次元電動姿勢変換装置『P-5(ピーファイブ)』に初めて試乗してみました。今回は、そのときの感想をお伝えします。
P-5とは
P-5は、三次元電動姿勢変換装置の文字通り“電動で姿勢を変えられる装置”です。具体的には、P-5自体は電動車いすではなく、電動車いすに搭載する背もたれユニットのこと。さまざまな電動車いすに搭載可能で、小柄な人から大柄な人までサイズがそろっています。
P-5のすごいところは、側屈(体を横に曲げる)、回旋(体をねじる)、伸展(背を上下に動かす)ができるところ。一般的な電動ティルト・リクライニング機能付き電動車いすと組み合わせることで、とれる姿勢はほぼ無限大なんです。
P-5の詳しい説明はこちらをご覧ください!
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P-5を使ってみた
P-5の効果がより伝わるように、まずは私の体の状態から説明します。
私は「脊髄性筋萎縮症(2型)」という病気の影響で、背骨が曲がっています(「側弯(そくわん)」といいます)。曲がり方は複雑で、右に回旋しながら左に側屈している、といった具合です。分かりづらいですね。
つまり……
①この状態(右に回旋)と
②この状態(左に側屈)。
上の①と②が組み合わさったような姿勢です。
側弯があると、肺が潰れて息がしづらかったり、食事のあとに膨らんだ胃が心臓を圧迫して苦しかったりします。また、体のどこかがいつも痛くて、左右非対称でバランスがよくない分、肩や首がひどく凝ります。
P-5 使用する前(通常の姿勢)
これは、ペルモビールにP-5を搭載した試乗車に乗っているところです。
体幹形状にあわせて作るモールドクッションの代わりに、ウレタンスポンジで隙間を埋めています。
ティルト・リクライニングだけでもある程度背中は伸びていますが、ここからさらに自由に姿勢を変えていきます。
P-5 使用後(側屈&回旋)
これが、左に回旋し、右に側屈させたところです。
P-5を使って、通常の私の姿勢と真逆の方向に姿勢を変換させています。ひじ掛けの位置を上の写真と見比べてみるとわかりやすいかもしれません。
こうすることで、側弯部分が伸びて、座高が頭一つ分は伸びましたね。心なしか足も長く見えます。
P-5体験前と体験後の体の変化
呼吸が楽
「息が吐ききれる。そのあと大きく吸える」これが最初の感想です。無理して深呼吸している訳ではないのに、肺の換気がきちんとできている感覚でした。あとは、体のねじれをなおすことで、頭と首の位置がまっすぐになり、気道が広がったのも理由かな? と思います。(個人の感想です)
実際に、パルスオキシメーターで酸素飽和度(SpO2)を測ってみるとこのとおり。
P-5から降りた直後では、SpO2が98%。
姿勢を伸ばすことで、酸素を多く取り入れられたようでした。
脈拍も通常より遅い、75。
普段の数値です。SpO2は、調子がよいときで95%から96%ぐらいです。
本当はP-5に乗る前に写真を撮ればよかったのですが、当日は忘れてしまったので、後日同じ条件(食後3時間ほど経ってから、いつもの電動車いすに乗った状態)で測りました。
ストレッチで凝りがほぐれる
回旋と側屈のストレッチ効果で、凝っていた部分がほぐれていく感じがしました。誰かに姿勢の変換を頼まなくても、自分で操作できるので、気軽に体を動かそうという気にもなりますね。
姿勢の変換を誰かに頼むとき、どう動かして欲しいかを説明するのはとても難しいです。自分で体を動かせる人が無意識でしている動きを言語化する作業は、骨が折れます。疲れているときは尚更です。そうすると、ちょっと痛くても、苦しくても我慢しちゃったほうが「気持ちは楽」なときがあります。それが積み重なっていくと、体の変形がさらに進んで悪循環になるのですが。
今回は、私の個人的な感想をお届けしましたが、実際にP-5を使用しているユーザーさんからも、「呼吸がラクになった」「もともと呼吸器を使用していた場面で、呼吸器をつけなくても大丈夫になった」という声があるそうです。
この感覚は、乗ってみないとわかりません。ぜひ多くの電動車いすユーザーさんに試乗してみてほしいです。
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文/こばやし
電動車いすユーザーで、SMA(脊髄性筋萎縮症)2型による四肢体幹機能障害。介助を受けながら在宅ワークをしている。