少しの振動で崩れてしまう座位姿勢を、支える車いす。

車種
F3 Corpus(コルプス)
メーカー
ペルモビール株式会社
機能
前傾ティルト・後傾ティルト
電動リクライン
足台エレベーション
電動下腿長調整
※全て電動
今回ご紹介するユーザー様は、
「エーラス・ダンロス症候群」という疾患で、関節の過伸展性があり、“柔軟・脱臼しやすい”という症状を抱えています。
日常のちょっとした段差でも頭部が前後に振られてしまいます。
また、関節が柔らかすぎるので、姿勢が崩れてしまいます。
その為、揺れが少なく、上半身を包み込むような座位保持が必要でした。
機種選定の打ち合わせから始まり、三機種(三回)の試乗、公費を支給してもらう為の判定、車いす製作の過程では三回の仮合わせを行いました。
打 ち合わせから納車まで、約一年という時間を要しました。
その間、ユーザー様と工房の間で細かいやり取りを行い、完成に向けて一歩一歩地道に進めていきました。
ご本人にしかわからない体の状況の聞き取りをし、解決策を探っていくという方法なので、お互いの信頼関係が最も重要でした。
納車後も、実際に使用してみて出てきた不具合を修正したり、定期的なメンテナンスをします。 これからも、末永くお力になれればと思います。
ユーザー様より
「痛みに耐えるだけの人生でいいの?」
この問いを初めて自分に投げかけたのは、8年前。
歩行に限界を感じていました。一歩足を出す度に体を貫く痛み。
季節を感じるアンテナも、人を気遣う余裕もなく、ただただ歯を食いしばり痛みに耐える日々。
疲れずに痛まずに通勤したい。電車を乗り継いで、お気に入りの店にも行きたい。コンサートにも行きたい。
でもそれだけじゃない。
季節を感じる余裕が欲しい。辛すぎてサボテンになり自分も周りもチクチク刺すのを止めたい。痛みよ。
“人の優しさに気付ける”人として基本で大切な心を奪わないで。“私は私の人生を楽しみたい”。
冒頭の問いへの答えはこうでした。
そして、簡易電動車いすを私の一部として迎えました。
私自身の、私を取り巻く世界は大きく変わりました。体が痛くないって何年ぶり?いや、初めての感覚だ。
全身が痛くないってこんなにも幸せなんだ。今まで白黒だった風景に鮮やかな色がふりそそいでいく。
しかし、私の疾患は進行性の難病。少しずつ着実に病状は進行していき、簡易電動車いすでは、私の体を支えきれず、再び痛みに耐えるだけの日々が戻ってきてしまいました。
「痛みに耐えるだけの人生でいいの?」
再びこの問いと向き合うことになりました。
私の個人的な感覚ですが、電動車いすのデザインや形に強い抵抗がありました。痛みからは解放されたい。
けど、新しい世界に飛びこむ勇気がない。約二年間悩みました。
でもそろそろ体が限界。そんな時に出会ったのがペルモビールの電動車いすであり、車いす工房輪さんでした。
デモ機を初めて見た時、最初に抱いた感情は「嫌だ。」でした。でも体は正直です。
試乗をさせて頂いた瞬間は「二度と降りたくない。」と思いました。
身体の要望と、心の拒絶を同時に抱えながらも、作業は着々と進んでいきました。
車いす工房輪の皆様は私の言葉に耳を傾けて下さり、大きな課題にも、些細な要望にも真摯に対応して下さいました。
心の拒絶は車いすが完成する間近までありました。
しかし、様々な事務的やりとりをして下さったスタッフの方が、「スタイリッシュですね。すてきですよ。」と、仰って下さり、同性の方がほめて下さったことで、心の拒絶が一気に緩んでいきました。
少しでも“ロボット感”が出ないように、金属やネジが見えているところは、出来る限り布で覆って頂きました。
私がお願いした箇所以外のところも布で覆って下さっていたのを見た時は、輪さんにお願いして良かったと、心から思いました。
車いすの機能だけでなく、使う人間の心まで機能のひとつとして考えて下さる。
工房輪の皆様が作って下さる車いすが私は大好きです。
諦めていた遠出も出来るようになりました。昨年は大阪へ行き、今年は和歌山へ行きます。
遠くで暮らす大切な友達に会いに行ける。
近くで暮らす大切な人達の優しさに気付くことができる。
私は今、人間として、人生を楽しんでいます。
工房輪の皆様、私に新しい人生を与えて下さりありがとうございます。
機 能 紹 介

4輪独立サスペンション
F3Corpusには、4輪すべてにサスペンションが独立搭載されています。
4輪独立サスペンションシステムが横方向の揺れを軽減し、座った姿勢の安定性を維持します。
生活環境に合わせてサスペンションの強さを調整することができます。
コルプスシートとの相乗効果により、さらなる振動減少につながります。


ジョイスティックとディスプレイを独立
視線の位置にあわせてディスプレイ”オムニディスプレイ”を設置することで、首の関節を動かすことなく確認が可能になりました。
ジョイスティックは操作のしやすい手元に設置。
また、少ない力(50g)で操作が可能なジョイスティック、”コンパクトジョイライト”を起用しています。
軽量ジョイスティック
コンパクトジョイライトでは、長いタイプのジョイスティックノブをオプションを選択することが出来ません。
ティルトやリクラで角度を傾けた際、ジョイスティック自体の自重で倒れてしまい中立が保てない為です。
そこで今回は3Dプリンターを使って、中身の充填率を下げた超軽量のジョイスティックを製作しました。
純正品の小ノブ型ジョイスティックは約8gですが、 今回作成した棒状のジョイスティックは約9gです。 (純正品のオプションの棒状のジョイスティックは同等形状で約40gあります。)
それでも限界近くまでティルトリクラを行うと倒れっぱなしになってしまうこともありますが、 そこまで倒す必要はありませんので、安全に使える範囲内での操作をしていただきます。
特殊軽量素材テーブル
ご自身で持ち上げられる重量500g以下の軽量テーブルが欲しい、という依頼を受け工房で製作しました。
500gは若干超えてしまいましたが、軽々と持てます。 使用した素材は、テクセルボード・カイダックなど。